木の横で濡れているあたしの自転車。 サドルがびじょびじょに濡れてるから乗れないな。 押して帰らなきゃ。 「じゃ、それ、いつか返して」 あたしはそう言って傘を差すと、自転車に片方の手をかけた。 けど、片手で押すのって案外難しくて すぐにバランスをくずしてしまう。 そんなあたしを見ていた裕斗が、ふっと笑った。 「バーカ」 そう言って、あたしの持っていた傘を取り上げる。 「送るわ」 「・・・あ、ありがと」