蝉の声がうるさい。 どこにいるかなんて分からないのに、今にも上から落ちてきそう。 腰掛けたベンチはどこかひんやりと冷たくて、 木の下だからか、ほんの少し風も感じる。 「―――何かあったんだろ」 「は?」 足を投げ出して携帯を見つめていた裕斗が、突然口を開いた。 確信をつくその言葉に、間の抜けた返事を返す。