「ねえ、知ってる?」
始めてみた彼女の笑顔に意識を飛ばしていたが、現実に引き戻される。
「当たり前だけどさ、
好きの分量って常に変わりつづけるものなんだよね」
急に何を言い出すのかと思った。
しかし、
彼女の言葉は重くも軽くもなく俺の心に響いた。
上加茂星羅が体をこちらに向けたまま顔だけを窓の外に向ける。
「だからさ、
人の気持ちなんて報われなきゃ簡単に変わるものだよ」
希望と絶望が入り交じった瞳。
俺に向けた言葉か彼女自身に向けた言葉なのか分からない。
しかし、
彼女は確実に誰かに言っている。
俺と上加茂星羅のいる教室に不思議な空間が出来ていたことは、
教室は入ってきた純歌に言われるまで気づかなかった。