その日は、いつもと変わらない退屈な日曜日になるはずだった…。

 俺は物心付いた時からお袋とともに、宗教団体「エル・ヴェナに関する証言」の活動をしている…いや、させられている。日曜日には遊ぶ事も許されず、ずっと教団の集会に参加だ。

 ところで俺の名前は明石真吾。高校2年生だ。はっきり言って教団の教えにはついていけな いものを感じているが、教団の小ステーク(地域ごとの支部)の連中(とくにお袋)との人 間関係で、今もずるずると集会に参加している。親父は信者ではなく、俺が生まれる前から小さい頃までは随分お袋の信仰に反対していたが今では特に何も言わず、離婚する気配も無い。

 教団の規則は日常生活のいろんな事にくちばしを挟むため、俺はこの年までろくにテレビも 見せてもらえないし、本も教団の機関誌ぐらい。お袋が俺を規則に従うよう、厳しくしつけていたおかげでこの方針が貫かれたのだ。おかげで、同級生とは話が合わず浮いてしまっている。

 「将来どうなってしまうんだろ……」と言う思いをかみ殺して今日もステークの集会所、「望楼」(教団がこの世の終わりを見張る場所だと言う教えにちなんでこう呼ばれる)に着いた。
 俺の所属する小ステークは、マンションの一室を望楼として借りている。
 ここには若い男手が少ないので、集会の準備の力仕事には必ず駆り出される。椅子をならべ、演台のマイクを調節する。この時が一番気が紛れるので力が入るためか、俺は「真面目な子」として通っているらしい。準備が整い俺が用足しにトイレに入った頃、お袋とその連れをはじめとした信者達が望楼に入り始める。

 そして、俺がトイレから出た時、信じられない光景が発生した!!お袋の体が光り輝きはじめたのだ。
 それだけならまだしも(この時点で充分異常な事態なのだが)、光が消えたあとのお袋は、どう見ても俺と大して違わない年にまで若返っていた!!!

「な、なに~っ!!」

 俺は絶叫した。まさかこれがエル・ヴェナ神のご利益なのか!?でも、それで何故お袋が若返る!?