「あ、……あー、聞こえるか?」


俺は、小声で呟いた。
もし、誰かに聞かれでもしたら、それこそ致命傷だからだ。
それに、皆寝静まっているはず、……用心に越した事はない。






「ん、感度は良好。
 こっちは、何の問題もないよ。」



相手の声は、心なしか弾んでいるようにも思えた。
楽しそうなのはいつもの事だが、……ともかく、俺は、相手の名前を呼んだ。


















「連絡が遅くなってすまなかった、……ミーシャ。」


「いや、良いよ。
 ビオラ、今日入寮したばかりで大変だったんでしょう?」





























今、俺が連絡を取っているのは、親友でもあり、同僚であり、
そして、俺に今回の仕事を寄越してきた張本人だ。
仕事の時と普通の時、ちゃんと区別してくれるから良い奴だと思う。
ミーシャは、どちらかというと、俺みたいな脇役よりも、
新聞を賑わすようなタイプの人間で、俺達のチームの中でも、
一際やる事全てが派手な事で有名だった。
















「それで、そっちはどんな感じかな?
 潜入調査なんて大層なものだなー、って、僕は思うんだけどね。
 派手好きな俺が、まともなアドバイスをあげるなんて無理だけど、
 ……それでも、愚痴を聞いてあげる事ぐらいは出来るんだから。
 ……ま、今までどんな任務も完璧にこなしてきた、天才裏方の藍斗には、
 こんな気遣いは必要ないかもしれないけどね?」


最後の方は、苦笑気味に、ミーシャは言った。