そう言って、悠里は笑った。
慈愛に満ち溢れた、……穏やかで優しく、強さも秘めた、美しくて清らかで、
俺には眩しすぎるくらいの、温かい表情。
俺は、こいつみたいな表情は作れない。
だって、演技で作ったとしても、それは、本気じゃないから。
ちょっとだけ羨ましく思った。



















「本当に、…………ありがとな。
 悠里には、感謝してもし切れないくらいだ……。
 今みたいに辛い思いさせちゃう時もあるかもしれないけど、
 しんどくなったら、ちゃんと言ってくれよ、…………な?
 言ってくれたら、きっと、今みたいに、俺の心にも届くから。
 何も言ってくれなかったら、俺自身が満足するか、理性が俺の力で目覚めるまでは、
 きっと止められなくなると思うから……。」


そう言いながら、悠里の背中を優しく擦ってやった。
悠里は、俺の言葉を聞きながら、その愛らしい顔を俺の肩に乗せて、瞳を閉じていた。























俺、この寮に来て良かったかも。
失礼かもしれないけど、今になって、初めてそう思った。
仕事も潜入した以上はしなきゃいけないけど、ここでの隠居生活は、
……思っていたよりは、悪くないのかもしれないと思った。
まぁ、俺が、歌手とかモデルをやっているのを知ったら、
多少は態度が変わるような気もするけど、…………でも、何だか、ここでなら、
やっていけそうな気がする。