「そう、…………ですか。
 それなら、これから知っていけば良いです。
 ただし、これだけは言っておきます。
 必要以上に、深く、俺の中に踏み込まないでください。
 俺は、汚れた自分をそうやすやすと他人に見せるほど、度胸のある人間では
 ありませんから、……ね?
 先輩も、綺麗な薔薇には棘があるという言葉は、ご存知でしょう?
 俺に関われば関わるほど、……茨の蔦に足を捕られてしまいますから。」



こんな事を言ったのは、初めてかもしれない。
挑戦的な瞳を、見透かすような先輩のそれに、深く、……濃密に、絡ませて。






















自分を知られるのが嫌なわけじゃない。
知ってもらわないと、相手だって、関わり方っていうのが分からないと思うし。
要するに、俺が嫌なのは、……相手に、必要以上に踏み込まれて、知られすぎて、
俺の世界を土足で踏み荒らされて、そして、相手に捨てられて、最終的には、
……独りになってしまう事なのかもしれない。
独りには慣れてる、寧ろ、独りになりたいと思ってみても、
心のどこかではそれを拒む、弱くて脆くて、……狡い自分がいるから。