「そうですか。
 朝から、良いお話、ありがとうございました。
 それじゃあ、俺はちょっとばかし用があるので、
 先に行きますね。
 ・・・・・・・・・いってきます、夏川先輩。」




自分でも不思議だけど、初めて、自然と笑えたような気が
した。
ぎこちない笑顔とか、完璧な作り笑いは出来るけど、
こんな風に笑った事はなかったから、新鮮だったな。
ほんのちょっぴり、うっすらと口元に浮かべる程度の
微笑みだけど、俺にとっては、大きすぎる一歩だったように
思う。
























「良いお話なんて、・・・そんな事ないよ。
 でも、そう言ってもらえると嬉しいな。
 ・・・・・・・・・ふふ、いってらっしゃい。」




夏川先輩も、柔らかく微笑んで、俺を見送ってくれた。
何か良いかもしれない、こういうのも。












































「・・・・・・・何だ、ちゃんと笑えるんじゃん。
 ふふ、良かった。
 本当に、最初見た時はロボットかと思っちゃったからなぁ。
 ・・・・・・・・・さてと、何か、あんな笑顔見たら、
 急に絵が描きたくなってきちゃったな。」



そう呟いた夏川先輩の声は、風にさらわれて、
空へと消えて行った。