「……何で、郁斗が、ここで寝てるのかな?」


扉を、わざとらしいまでに緩慢な動作で閉め終えると、少し間を置いて、
先輩であろう、彼は言った。
言い方はさりげない調子だが、その顔は、しっかりと俺に向けられている。
俺の心の奥さえも探るように、見透かすように、澄んだアイスブルーの瞳が、
静かに俺の姿を映していた。
















「ちょっと転入したばかりで、精神的に疲れていて、その、……思わず、
 本当に不可抗力なんですど、……手が出てしまいまして。」


自分でも思うよ、精一杯の弁解だって。
というか、今更だけど、……不自然すぎるよね、この状況は。
新入生に挨拶に来てみたら、……見知った寮生が寝ていた、……いや、正確に言うと、
失神していたなんて。