どれくらいこうしていたか、覚えてない。
でも、規則正しく響く鼓動が、静かに、……でも、確かに、俺の心を満たしていく。
穏やかな時間と、慈愛に満ちた空間。
それは、不意に破られた。












キィ……。
ガヤガヤガヤ。

















「あー、今日も疲れたー。」


「何でこうも、仕事が多いんだろうね。」


「飯の前に休憩したいな。」


「あぁ、もっともだな。」



















いくら1階と2階の差はあろうとも、この静かな空間に、
その音達が響かないはずはなく、俺は、悠里に小さく声をかけた。




「何事もなかったフリして部屋に戻りな、悠里。
 また、……後で、な。」



「ん、分かった。
 じゃあ、……また後で、ね?」



「良い子だから、……さ、早く。」



こんな感じのやりとりを早急に済ませて、俺達はそれぞれの部屋に戻った。
ちょっぴりスリリングで、面白かった。
悪戯を企む子供の心境が、よく分かった気がした。
部屋に入って間もなく、ドアの前を通り過ぎる足音が聞こえた。