「あ、はい、大丈夫です。
 あの、何か、……すいません。」


明らかに挙動不審だ。
でも、申し訳なさそうに苦笑している彼の表情を見ていたら、
そんな些細な事は、どうでも良くなってきた。
そして、気付いたら、名前を聞いていた。






















「君の名前は?」


自分でも驚くほど優しげな声だった。
バラードを歌う時は、確かに、柔らかい声色で
歌うけど、素でこんな声が出るとは思わなかった。

























「相沢悠里といいます。
 えっと、……よろしくお願いします。」



そう言って、悠里は、おずおずと、手を差し出してきた。