そいつは、思いっきり吹っ飛んで、壁に叩き付けられる鈍い音がした。
それ自体は、別段問題なかったが、俺は、この状況に違和感を覚えた。

























手加減したはずなのに、……妙だな。
確かに、向こうも弱腰じゃなかったから、あまり手加減が出来なかったんだが、
……後で、起きたら問い質してみるか。
そして、こんなとこに放置しとくのも気が引けるし、……面倒な事この上ないけど、
……運ぼう。




























俺は、そいつ、いや、……郁斗先輩の方へ、つかつかと歩み寄り、
倒れている前にしゃがみ込んで、背中と足に腕を回して抱き上げ、
とりあえず、俺の部屋へ運び込んで様子を見る事にした。
そういえば、若干、脱衣所の壁にヒビが入ったような気がしたが、
……後で謝っておくか。