「俺は、生まれた頃の事はあまり記憶にないが、
 両親曰く、絶世の美少年のような出で立ちだった、……らしい。
 で、俺の家は、不幸な事に貧乏だった。
 毎日、生活していく事も、やっとの状態だったんだ。
 その時に、俺が生まれた。
 金はないが、人は増えた。
 赤ん坊の時はミルクだけで済むが、成長すると、
 そういうわけにはいかない。
 その人がどうなるか、……分かるか?」



同情を求めたのか、単に、事実を事務的に知らせたかったのか、
それは、俺自身にも分からない。
だが、俺は、確かに、この質問を投げかけていた。




































「売春、…………いや、人身売買、か……?」



凪は、まるで禁断の果実を口にするかのように、その言葉を口にした。
細々と、顔は固く俯いた状態で。
いや、今更、俺は、こんな話をした所で、
女々しく傷心したりしないから、安心すれば良いのに。