俺は、芸能界っていう世界は、あんまり好きじゃないが、
音楽とか、演じる事とか自体は、嫌いじゃない。
寧ろ、好きな方だと思う。





















音楽は、気持ちを落ち着かせたり、時には、
慰められたり、励まされたり、色々な気持ちを、俺に分け与えてくれる。
生い立ちが悪かったのか、感情の極端に乏しい俺に、
喜びも、悲しみも、楽しさも、痛みも、慈しみも、実に、上手く伝えてくる。
だから、高嶺の花にいる、人気歌手としての俺は、
正直吐き気がするくらいだが、純粋に、歌を歌っている時の俺は、
自分の世界に入って、思いっきり打ち込めて、そんな自分は、嫌いじゃない。
そういう意味で、音楽を聴くのが、俺は好きだ。






















ちなみに、演じる方は、それこそ、本当に、役柄に溶け込む、心酔する、演じ切る。
まぁ、職業的に言うと、モデルの方なら、
そのポーズを出来る限り美しく映し出させるし、
こっちのお仕事の方なら、変装やら猫被りやら、
自分のキャラに合わないような事も、平然と装って、それを可能にする。



























いずれにせよ、嫌いじゃない。
だが、自分よりも圧倒的に上を行く者を見ると、
自然と、その姿に、戦慄を覚える。
言うならば、それは、劣等感。
芸能界で、これを覚えた者は、敗北するというのがセオリーだが、
俺の場合も同じだと思う。
自分を遥かに超越する対象に巡り会い、確かに、
この胸で、心が、降伏を示した時、それが、敗者の証として、
潜在意識下で、刻印として、刻み込まれる。
それは、動かない恐怖となって、俺を追い詰めていく。