寮に戻ってみると、見事なまでに誰もいなかった。
それを見越して、俺は、盛大に溜息をついた。



「はぁ、……完全に、喧嘩売っちまったような……。」



















別に、後悔はしていない。
今でも、時々、学校の掃除、という仕事は舞い込んでくるから、
慣れていないわけでもない。
だけど、今回は潜入調査、それが本分。
だから、なるべくなら、面倒な事には関わりたくなかった。




























「そんなに溜息ついてると、幸せが逃げちゃいますよ?
 藍斗先パイ?」


不意に、背後から声がした。
この寮で俺の事を先輩と呼ぶのは、ただ一人しかいない。