「どうしたの?」

婚約者でもあり、彼女の弥生が俺の顔を覗き込んだ

「あ、いや、何でもないんだ…」

「この間会社に行って、お父様に何か言われたの?」

「いや…、急に現実が見えたと言うか…」

俺は置いていたナイフとフォークを動かした

何て説明していいかわからない…

「大したことは無いんだ…」

「そう?それならいいんだけど…」

弥生はまだ腑に落ちない表情をしながら、ローストビーフにナイフをいれた



気のせいだと思いたい



俺の中に生まれた、訳のわからないこの闇が何かの間違いなんだって

知らないフリをしていないと飲み込まれてしまいそうで…


気のせいだ…



俺は静かに



目を閉じた