最期に、先生の手を取った私に、

「宮地……宮地 愛(あい)……

愛に…出逢えて…よかったよ……」

と、先生は笑顔を向けた。

「バカ……なんで、最期だけ名前で呼ぶの……。

私にだって、名前で一度くらい呼ばせてよ……。

中矢 透(とおる)って……透、って……」

つかんでいた先生の手が、私の手の中からこぼれていく。

力なくベッドの上に投げ出された、やせ細った手を、私はもう一度強く握った。