だから、帰り際に階段の踊り場で先生と会った時にも、

私は先生を無視して通り過ぎようとした。

「宮地!」

と、先生がいつもの調子で私を呼び止める。

私は聞こえないふりをして、階段を降りようとした。

行きかける私の手を、

「宮地、待てって!」

と、先生の手がつかんだ。