*執事サマの甘い誘惑*




―――…‥



「で、逃げてきたってわけ!?」




授業が始まる十分前。


教室に入るやいなや、あたしは綾香に駆け寄って早口でしゃべりまくった。


…平和な学校生活をおくりたかったのに


あいつのせいでめちゃくちゃ。


しかも、綾香から返ってきたのはなんと呆れた表情。




「プリンスになんて失礼なことをっ」


「違う違う!失礼なのはあっちの方よ。」




なにが『守る』なんだか。


一番危ない人物は東堂蓮じゃない!




「でも…結衣の負けだね、それ」


「へ…」




あたしはうっかりノートを床へ落としてしまった。




「なんでっ?あたしが東堂蓮を認めるわけないよ」




あたしの負け?




「だって、執事と行動してなかったら減点されていって、しまいには退学になっちゃうじゃん。」


「あ…」




そうだった。


契約したからといって、一緒にいなければ意味がない。


教室の監視カメラでチェックされ、減点される。


それを理解した瞬間、さっと血の気が引いた。




『あなたは必ず私を必要としますよ』




彼の声が頭をよぎり、すかさず立ち上がった。




「あたし、東堂蓮探してくる!」






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