*執事サマの甘い誘惑*





――――…‥



「…ついて来ないでよ」


「いいえ、お嬢様のお側にいるのは執事として当然の事なので。」




あたしは自分の部屋に向かって早歩きする。


一歩後ろには、あたしの歩く速さに合わせる東堂蓮。




「退学にならなくて、よかったではないですか」


「…‥。」




あー。


確かに執事が見つかった以上、退学の不安はきれいさっぱり消えましたが。


あんな人前で、しかも無理矢理契約させられた身にもなってほしい。


あたしの心情とは裏腹に、東堂蓮の声は明るくて楽しげ。




「なんで今更敬語なんかつかうの」




正直、敬語で話されると緊張してしまう。


あたしは立ち止まって振り返った。


そんなあたしに少し驚いた表情を見せ、東堂蓮も立ち止まる。




「…お怒りになられましたか?結衣サマ」




そう言って、あたしの顔を覗き込む彼。


甘くて低いトーンの声。


彼の瞳はやっぱり、意地悪そうにあたしを見つめる。




「だいたい、どうしてあたしなんですかっ?他にお嬢様なんていくらでもいるのに」


後ずさりしながら言った。


それでも東堂蓮は近づいてくる。




「桜井修造様に、プリンスが結衣様をお守りするよう、頼まれまして。」




…は?


なんでお祖父様!?






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