*執事サマの甘い誘惑*





また訪れる周りの沈黙。


一瞬、時が止まったような気がした。




「あの…離してください」




もう一度彼の視線にぶつかる。




「それは無理です」




そう言って彼は、そのままあたしの腕を引っ張った。




「わっ…!?」




彼はあたしを引き寄せて、顔を耳元へ近づける。


彼の吐息があたしの耳元にかかる。


緊張なのか、何なのか、心臓の音がはじけそうなくらいドキドキする。


そんなあたしに彼は囁く。




「俺との契約断るなんて、いい度胸してんね。」




あたしと彼にしか聞こえない声。


低いトーン。




…何コイツ、二重人格!?




あたしは「有り得ない」と思いながら、彼の表情を恐る恐る見る。


笑顔だけど…


爽やかな、じゃなくて


意地悪そうな笑み。







.