「皆ぁ!重役出勤の三枝クンですよー」
山地め。調子に乗ってるな。
そんな事よりも、皆からの視線が痛かった。それでも、山地と高円寺の一件が済んだ事が嬉しかった。
「高円寺ぃー。ペンキ取って」
「うーん!」
高円寺もいつも通り山地と話せている。
「何ボケッとしてんのよ」
長月の鋭い一言で、一気に現実に戻った気がした。
「…はい」
取り敢えず掃除する手を動かす。
「三枝君って遅刻する時あるんだね!」
今度は橘だ。
「そりゃ、完璧な人間なんていなよ?」
田中のナイスフォローが入った。
「あ!田中君、ペンキ制服に着いてるよ?」
「え!?」
「うそだよーー!」
「なんだよっ」
二人も仲が良いままだ。
「…相田。もういいかな」
「ええ。後はペンキの追加ね」
「…はいはい」
俺はトボトボと事務室へと歩いて行った。
「三枝君っ」
「……なんだよ高円寺」
「私も途中まで…」
「何か頼まれたのか?」
「皆の飲み物をね」
「高円寺じゃなくて、山地とかに頼めばよかったのに」
「いいのっ……」
「……」
「あの、山地君から聞いたの…。三枝君の御陰で話す勇気が出たって…だから、私と山地君が元に戻れたのは三枝君の御陰なの…」

