そして、遂に夏休みに入った。俺は家のカレンダーを睨みながら考えいた。

実は昨日、ホームルームが終わって、夏休みの喜びに沸き立つ騒がしい教室から出ようとした時だった。

「おい。三枝」

「なんだ。山地か」

「あのさ、八月一日から一週間くらいまで暇かな?」

「…まぁ、色々用事はあると思うけど。何だよ」

「うちのお祖母さんがさ、海の近くで店やってんだよ。そこで遊んだり、ご飯も作るっていう条件でバイトに来ないかって誘われててさ。一緒にいかねー?」

「うーん。いつまでに返事すりゃ良い?」

「できれば、三日前くらいまでかな」

「じゃ、考えさせてくんない?」

「わかった!!じゃあ、俺部活いくわ!」

「おう。またな」

山地は嬉しそうに走っていった。

…ーと言う訳で、俺は山地に誘われていたのだ。返事は遅らせたものの、きっとアイツは気付いてるんだろうな。

俺が山地に「考えさせて」と言う時は必ず予定があっても空けるってことを。

基本的に俺はその場で『OK』は出さない。もし、当日行けなくなったり行きたくなくなったら相手に失礼だし、大概は面倒だから。

でも、山地との時は別だ。高一からの付き合いで、山地とはずっと一緒にツルんできた。