「俺、送ってくよ」
「別に……」
「いいから。じゃな二人とも」
俺は半ば強引に長月を連れて道を先に進んだ。山地は小さく手を振っている。
顔が真剣そのものだ。
「ちょっと!何なのよ!」
「うっさいな。俺と帰るのがそんなに嫌かよ」
「……っ!?」
(えっ…いや…そういうわけじゃ…)
「何、動揺してんだよ。冗談だよ」
「…バカ」
「顔、赤くなってんぞー」
「見ないでよっ」
「何だ。やっぱ赤くなってんだー。こんな暗くちゃ顔の色なんてわかるわけねぇだろ」
「…っ!?」
「ハハッ。墓穴ほったぁ」
「もうっ!」
長月は俺の後ろに回ってバッグを叩いた。
「八つ当たりだ」
「うるさいわよ。私なんて送らなくても良かったのに!それに山地君が何で…」
「………山地は高円寺が好きなんだよ」
高円寺は俺が一息ついて言った言葉に相当驚いたようで、その場で足を止めた。
「……うそ…」
「山地は多分、今日にも想いを告げるだろうな」
「山地君って千広だったのっ!?」
「浜辺の家の時から、と言うか前からだったらしいけどな。気付かなかったのか?」
「気付かないわよっ」
「だよな。じゃなきゃ、こんな驚かないか」
「どーしよっ……」
「何だ?何かマズいのか?」
「だって千広は……」
「高円寺が?」
「い、いやっ!何でもないっ」
「……あそ。山地、頑張ってんかなー」
(三枝…千広はアンタが好きなのよ?…山地君の想いは…千広には届かないのよ…)

