スカイ・フラワー

山地は満面の笑みを浮かべながらも、右手を顔の前へ出して、「サンキュ」と小さく囁いた。

俺は元の姿勢に戻ると、少し息を置いてから言った。

「……この後…さ…」

「何よ?」

俺はこの時、人に言葉を投げ掛ける難しさを身に覚えた。

こんなに勇気がいるものだとは思わなかった。



「……一緒に宿題やらないか?………」






「「…はい?…」」




俺を除いた三人の反応は手にとるように分かった。

「おいっ!三枝っ」

山地はまた俺の肩を持って小声で言った。

「誘い方ってもんがあるだろ!宿題持って来てなかったらどうすんだよ!」

小声ながら、十分に大声だ。

「仕方ないだろ!誘う理由までは言わなかったじゃんか!」





「やりますっ!!」



「「えっ!?」」

今度は俺と山地が言った。声の主は高円寺だった。

「あ、そう?!じゃ、何処でやる?」

「千広の別荘でいいんじゃない?」

長月は頬杖しながら、興味ないように言った。

「うん!三枝いいよな?」

「あぁ」

「じゃあ、一回店もどってから行くね!」

山地はサッと話しを済ませた。

さすがだな。

俺は感心した。




俺と山地は海の家で女子二人とわかれると、店に戻った。

「ところでお前、宿題持ってきたんだな」

「俺を見くびるなよ?こう見えても勤勉なんだぞー」

まぁ、やればできる奴なんだろう。

「シャワーも浴びたし、もう行くのか?」

「どうする?聞いてみる?」

「お前、携帯知ってんのか?」

「うん。高円寺のならね。前に交換したんだぁ」

先程も言ったが、さすがだな。ちゃっかりアドレスも番号も交換していた。こういう時だけ抜け目がない。