流れに巻き込まれて思うように止まれない。

(ここ何処なのっ!?マズいっ!どんどん違う方へ行っちゃう……っ!!)






………三枝君っーーー………!!








ガシッ!……っ!


急に腕を掴まれて流れから開放された。



「ハァ…ハァ…っ…」

「…三枝君……」

香はニッと笑った。額には汗が滲んでいた。

千広は香の手からの体温が直に伝わり、その温かさは胸の鼓動を大きくさせた。

「わりぃ。ちゃんと手ぇ握ってりゃ良かったな」

「………」

千広は赤くなった顔を隠すよう俯いて、首を振った。

「手握るのイヤ?」

香は優しく言った。

「ち、違うっ……その…はぐれたの私のせいだし……ごめんね…」

高円寺の目は涙ぐんでいた。

「こ、高円寺のせいじゃねーよっ!俺がしっかりしてなかったからな訳で、高円寺は悪くないって!泣くなよっ」

「……うん…ありがと」

「……じゃ、行くか」

トクンッ…トクンッ…心臓はまだ大きく鳴っている。千広は繋がれた手の感触と温もりがずっと続いてほしいと思った。

高鳴る心臓の音は前よりも大きいものだった。


高円寺は小さく頷いた。俺は高円寺の手を握ると列に戻って境内の階段へと向かった。



今度は無事に階段前に着いた。階段を上り切るとそこにも屋台があったが、人は少かった。



「はい。ジュース」

「わぁ!ありがと!」

俺と高円寺は暫くの間、眼前に広がる茜色の空と夕陽で紅く染まった海を眺めていた。