「なぁ。高円寺ってさ男子と喋る時ってどんな事で喋んの?」

「…えっ!男子と?」

「そう。山地とかさ」

「そうだなぁ…。ドラマとか学校の事とかかな…」

「ふーん」

「どうしたの?」

「いや、人と話すのって話題がないと気まずくなるじゃん?」

「うん…そう、かな」

「今日さ長月に女子に興味ないの?って聞かれてさ」

「…それで?」

「いや、俺って女子も男子もあんま話さないから…って答えたんだ。そしたら、彼女がどうとか言い出してさー。変じゃね?アイツ」

「そ、そうなんだ…。それで何て答えたの?」

「彼女はいないって言ったよ」


千広は俯き加減だった頭を一瞬あげて、香の横顔を見上げた。

「へぇ…」

「高円寺。そろそろ、境内前につくから俺の服掴んでな」

「へっ!?」

「はぐれないようにだよ」

「あっ!うん!!」

千広は香のTシャツの背中少し下をキュッと掴んで香の後ろについた。

赤くなった顔を見られないで済み、ホッとした表情で香の広い背中を見ながら歩いた。



俺達は境内前の左右に別れる流れに差し掛かった。

俺は右側へ曲がる人々をかき分けて真直ぐに進んで行くが、突然、背中の服を掴まれている感覚がなくなった。

「キャッ!」

千広は横から入って来た男にぶつかって、咄嗟に手を放してしまった。

「あっ……待ってっ……三枝君!!」

香の姿はもう見えなかった。