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今日は例の日。

時刻は九時ちょっと前。

午後からなので、一日休みだけど午前は花の手入れや掃除をすることにした。

山地は朝から落着きがない。

まぁ、分からない事はない。なんたって好きな子と祭りに行ける日なんだから。

俺は店頭でいつも行う掃き掃除を黙々と進める。

すると、隣りの大きな門から長月が出て来た。

その後ろからは遅れて高円寺が出て来た。

「おー。少年。働いてるわね」

長月は俺の前まで歩いて言った。

「なんだよ。どっか行くのか?」

「ちょっとねー。千広ー!早くぅー」

その声に高円寺は小走りで来た。俺に気付くと少し驚いたようだった。

「よぉ。高円寺」

「お、おはよっ」

「気をつけて行けよ?」

長月は先をゆっくりと歩いている。

「うん。ありがと!じゃね!」

「あ。ちょっと待って」


香は突然、千広の肩を軽く掴んだ。

「ひゃっ!」

千広は思わず声をあげた。

「動くな……捕まえた…」

「………っ」
(さ、三枝君の手がっ…。私の肩…肩に…)

千広の顔はボッと赤くなった。

「…虫だ」

香の手の甲には小さな七つ星テントウ虫が乗っていた。

「…あ…ありがと…」

「あぁ。じゃあな」

「うん…」

俺に短く返事すると、高円寺は走って長月の後を追っていった。






タッタッタ…。

「もう!遅いわよー」

「ごめん!ごめん!」

「あれ~?何か元気じゃない?三枝と何かあったの?」

「エヘヘっ!何にもなーいっ」

「何笑っちゃってんのよー」

「いいから早く行こぉ」

「はいはい」