なんで死にたいのと聞かれたら、きっと私は答えられない。
意味なんて、最早そこにはなかった。

心で何を感じているのか、それが分からなくなってから、私は生きている感覚を失なったんだ。

そう。あの時、私の全ては終わった。
終わっていた。

そして、今に至る。

男の靴音で、私は我に返った。と思ったら、男は急に私の腕を引き、道の真ん中に立たした。

「な…何…。」

何をするのと言う前に、今度は自分の持っていた傘を地面に放り出した。

当然、屋根も何もないここは立っているだけでびしょ濡れ。

男の漆黒の髪も、私の身に付けているワンピースもみるみる内に濡れていく。

私は、信じられないという表情で男を見た。

男は空を見上げ、微動だにしない。

…異常者。初めはそう思った。

逃げようかと、身を反転しようとした時、男が顔を元に戻し私の腕を掴んだ。

「話を戻しましょうか。」

「何なんですか…。びしょ濡れなんですけど。」

ワンピースの裾をチラッと上げる。
男はあぁと、間の抜けた声を出して人差し指で空を差した。

「あなた、いつも雨の日傘を差していなかったでしょう?雨が好きなのかと思いまして。」

その言葉に私は目を見開いた。