あの日も、確か雨だった

透き通る綺麗な雨で、その中であの人を待ってた。

ずっとずっと。

そして、その結末は私しか知らない。

知らないはずだった。

「契約?」
降りしきる雨の中で、私の間の抜けた声が響く。

契約って…、この人何かの販売者?

え~、でも見えない。
男はキョトンとする私を見て、クスリと笑った。

「突然契約といわれましても、困りますよね。」

…えぇ、まぁ。
それにしても、この人何で敬語なんだろ。
…璃雨より年上なはずなのに。ますます怪しい。

私はこの時、自分が死のうとしている事をすっかり忘れていた。

いつも、それしか思っていなかったのに。