実践の研修に入っても最悪だった。
気道確保や人工呼吸、怪我の処置とか、
マネキンを相手に指導を受けていると、
「お嬢、手はこっちだって!」
「お嬢、人工呼吸はマネキンじゃなくて俺ね!」
「お嬢、さっき言われた事とちげーよ~」
と、横から上から下からからかってくる。
そのたびに周りからクスクス笑われて、
実践している私が恥ずかしい!
「次、君ね」
「ほ~い」
散々私を邪魔するだけ邪魔して、
砂野の番が廻ってくると難なくこなしてる。
人工呼吸とか、心臓マッサージとか、
テキパキとやってるところを見ると、
砂野だって真面目に見えるのに。
「お兄さん、このマネキンって女ですよね?」
「ん?まぁ、一応そうだな、胸もあるし」
「良かった~!男とチューしたくねぇもん!」
周りで一緒に研修を受けていた人たちが、
砂野のその一言にドッと笑った。
「女の子だって想像してやれば熱も入る!」
とか言って、マネキンの口見てハアハアして
指導してたお兄さんに叩かれてやんの。
でも、周りはその砂野の様子を
面白そうにクスクス笑いながら見てる。
