悲しい教科書は、
もう悲しくない教科書になっている。



さっき、クラスメイトにわざとぶつかられて、
廊下のど真ん中で派手に転んだ私。



転んだはずみに、ランドセルが開いたとは
思えなかった。
つまり、誰かにランドセルを前に
開けられていたということだ。



もう辛さも感じない。



自分の口から白い息が吐き出された。
自分の手も心も何もかも冷たくなっていたような気がした。
白い息が、今は冬だということを告げた。



皮肉にも、その日は雪が降っていた。
廊下はみんなの上履きによって、
冷たく濡れていて、私は泣きたくなった。



誰にも助けてもらえるはずなんてない....



そう思っていた私に助けの手を
差し伸べた人は、伊藤咲月、
私の憧れの人....



信じられなくて、
咲月を目を見張ってみてしまう。



私を助けたら、あなたも巻き添えなのに、
良いの?心の中で喋りかける....



その次の日から、天国にいるようだった。
咲月の友達には仲良くしてもらい、
クラスの人たちには何もされなくなった。



クラスに居る時は楽しくなかったけど、
休み時間や授業の合間に咲月たちに
会いに行くのが1番の楽しみだった。



───それが、小学4年生の冬だった。