第8章:朋子side


「あの....大丈夫?」



そう声を掛けられて、息が一瞬止まった。



ドキっとしながら、恐る恐る振り向いた。
私に声を掛けるなんて、どんな子だろう。



まだ幼くて、何も分かってなかった私だけど、
私に話しかけた子は、次の日には私を無視する。
これくらいのことは、分かっていた。



そして、ふんわりと可愛いウェーブを
放った私の憧れの髪の毛を見た時、
あっ....と思わず声に出していた。



1人しかいない。
あんなお洒落の髪の子は。
....少なくとも私の知っている中では....



顔を見て、確信を持った。



「伊藤さん....?」



憧れの子だった。
だから、ずっと違うクラスだったけど、
いつもいつも彼女を目で追いかけていた。



「あ....ごめんね。
 うん、私、伊藤咲月だよ。」



そう言って、ぶちまけられた私のランドセルの
中身を、丁寧に拾い上げた。



拾い上げられた、私の教科書たちは、
さっきまで灰色の影がついていたのに。



彼女に拾い上げられた瞬間、
輝きを放った。私にはそう見えた。