第1章:咲月side


「なんで....」



寒さとショックに震えながら、
咲月は動くことも出来ない。



そして、脳は活動停止中だった。




雪が綺麗に積もった朋子の家の前の通り。
辺りはシーンとしていた。



手袋の中で自分の手を
握りしめながら、
ひたすら、現実逃避をしていた
彼女の背中を軽く叩いたのは、
5才くらいの小さな男の子だった。



「おねえちゃん、どうして泣いてるの?」



男の子の丸い目が、
咲月の目を覗きこんだ。



綺麗で、純粋な目だから、
まるでX線に見透かされたような気がして、
咲月は目を逸らす。



「何でもないよ....
 本当に、何でもないの!」



慌ててコートのファーで
顔を隠し、自分の家に向かって
まっしぐらで走った。



....プリクラ帳を手にしたまま。