みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~



学校の健康診断のとき、大きく囲んだ円の中に色とりどりのつぶつぶで描かれた数字を見せられては、なんて書かれてはるか訊かれたことが誰かてあるんちゃうかな?

小っさい頃から毎度まいど、みんなが次々と数字を答えていくなか、ウチひとりだけがさんざん悩んだあげく、結局、色の区別がつかんと、間違ごうた数字を答えてまう度に、ウチは己の生まれの不運を呪ったもんや。


三姉妹の中で絵を描くとか芸術的なことに興味があるんはウチだけで、あとの二人は絵なんて全然描かへんのに、二人の色覚に異常はあらへん。

ゆうたら姉や妹なら、たとえ色弱でもナンの不都合かてあらへんのやさかい、いっそのこと二人が色弱になればよかったのに、とさえ思う。ホンマになんて理不尽なんや?

ときには世間一般では色弱といわれているウチの色覚こそが正常であって、他のみんなのほうが間違ごうた色を見てはるんやとさえ思ったことかて何度もある。


別に、色弱やからいうて色の区別が全然つかんわけちゃうねん。信号の色が分からんとか、“戦隊ヒーロー”の五人の区別がつかへんなんてこともあらへん。つまり、日常暮らしてるぶんにはナンも不便なことはないんや。


直接、自分の目で見たもんしか信じられへんいうのは事実やと思う。