みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~



他人からしてみれば信じられへんことかもしれん。どない自分の絵に自信があるからゆうて、目の前で自分の絵の贋作を描かれて黙っとるなんてこと。

もちろんウチが知らん間に、勝手に真似して描かれたってゆうのもあるんやけど、もしそのことに途中で気がついとったとしても、なかよしの一葉に対して、ウチがそれを辞めさせていたとは思えへん。


ほんなら、同じ絵を描いたはずやのに、なんでウチやのうて、一葉の絵が最優秀賞を取ったんか?

あのあと、自分なりに考えて、自分なりに答えも出とった。

ウチが最優秀賞を取れへんやった理由……、

それはウチが“色弱(しきじゃく)”やったからってことや。

色弱ってゆうのは、赤や緑の色が別の色に見えるっていうある種の色覚異常のコト。


ウチが「なんで一葉が最優秀賞なんか?」って抗議をしたとき、先生はこない答えた…、

「確かに同じ構図の絵だったけど、各務さんの絵のほうか色使いがよかったから選んだ」

…って。

ウチは、あんときの先生の言葉を今も忘れずに覚えてとる。