「まぁまぁ、竹下先生。ちゃんと消化もできた訳だし、そんなに怒らなくてもいいじゃありませんか。吉永先生もこうやってちゃんと謝っているし。」


「謝れば済むという問題ではない。それに宮城先生、君も吉永先生を庇っている場合じゃないんじゃないかね。君はあの時一体どこにいたんだね。岸和田先生はたこ焼きの担当。他の先生も僕も自分の仕事を全うしていたんだ。それなのに君は担当もないのにどこかに行ってしまって…。もっと早く君が見回りをしていれば、あんな大事には至らなかったんだ。」



　どうやら竹下春夫は、吉永にだけではなく誰に対しても態度が悪く、好かれていないようだ。


　生徒から見ても、”生徒指導の怖い先生”で、近寄りがたい存在だが教師からしてもうっとうしい存在に変わりはないということだ。


「昔から、岸和田君は真面目な人だったな。一緒に入ってきた月山君もだが。彼は本当に優秀な人だった…。君にも見習ってほしかったね。」



　竹下春夫の口から、桜のお父さんの話題が出てきたことに驚いた。



「先生、桜のお父さんをご存じなんですか？」


「あぁ、若い頃は、僕も岸和田君も月山君も、同じ大学にいたんだよ。僕らは教育学部の出じゃぁない。理系大学出身なんだ。そこで3人とも同じ大学院にいてな。」


　竹下春夫は懐かしみながら話をしている。