「いったい何があったの?」

 
 心配そうな顔で、桜の顔を覗き込むようにしている吉永に、桜は昨日のことを話した。



「あら…そう…。それって.....フラッシュバックっていうやつかしら。」



「フラッシュバック.....」


吉永の言葉を繰り返す桜。
あまりピンと来ていないようだったが、吉永は続けて言った。


「私も実際に経験があるわけではないんだけど、記憶が無い人が、何かのきっかけになくした記憶の一部を思い出すことを言うんじゃなかったかしら。もしかしたら、昨日みたいにまたそういった事があるかもしれないわね。少しずつでも思い出せると思うな。」





「そう…ですよね…。でも、私…正直言って、自分の過去を知るのが少し怖いんです。倒れていた男の人が私の父だとしたら…、もしかしたらもう生きていないかもしれない.....。そういう事実を知ってしまいたくないっていう気もするんです…」



「わからないことはわからないままの方がいいこともあるってことね?」


「はい…。」