「良かった…」 その呟きが聞こえたのか、怪訝そうな表情をして顔を上げた。 何が?とでも言いたそうな瞳は、まっすぐに僕を射抜く。 「キスしてないってこと」 「なっ……!き、期待に応えられなくてごめんね!」 絶対勘違いしている。 視線を合わせようとしたけど、なかなか合わない。 素直になれなくて、目を逸らして口を尖らせた姿がとても愛しい。 「違うよ。そういう意味じゃなくて」 「じゃあ、どういう意味?」 間髪入れずに問いただしてきた勢いに、少し怯んでしまったけど、負けじと続けた。