バイクは速度を落とさず走りつづけた。

過ぎ行く景色を見ながらあることに気づいたのは見たことのある公園を見つけたからだ。


………まさか!


予感は当たった。
バイクは一軒の家の前で停まった。


「ここ……」


「オレん家」


バイクを降りて手を差し伸べながら神田は言った。

「降りれる?」

「あ、うん」


私はバイクを降りようとしたが過って挫いた足に重心をかけてしまいバランスを崩して前のめりに倒れた。




ふわっと、香水の香りがしたときには神田の腕の中にいた。


「大丈夫?」

「ご、ごめん!」


慌てて離れようとするが足が痛くて上手く力が入らないし中途半端な倒れ方をしていて離れられない。


「支えるからゆっくり降りて」


そう言って神田は私を支えてゆっくり降ろしてくれた。



「家族寝てるから静かにね」


カギを静かに開けて中に入っていく神田のあとにつづいたとき足に痛み以外の違和感を覚えた。

(私、裸足だったッッ!)

ミュールを脱ぎ捨てていたことを忘れていた。


「ちょっと待ってて」

そう言って神田は中に入っていき、戻ってきたときには絞ったタオルを手にしていた。


「はい、これで拭いて。
オレ先にいってるから
終わったらそこに来て」

それだけ言って神田はスタスタとリビングらしき部屋に入っていった。


私はストッキングを脱いでタオルで汚れを落としてから壁つたいにゆっくり神田の入った部屋に向かった。