「やめんか!!!!」

神田のお父さんの怒声をあげて、ピタッと喧嘩もやんだ。

(鶴の一声………)

「全く、人前で情けない。
冬哉、人の物を欲しがるな。」



「だってこれ、『killer』のだって言うからつい…」



「えっと、どういうことなんですか??」

あの店ってなんかあるの??

「香弥乃ちゃん……
知らずに買ったの??」

あの辺りで一番、お洒落で入りやすそうだったから入ったんだけど……

「はい。」

「マジかよ……。」

なんか呆れてる?
神田を見ると同じような顔をしていた。

「春哉、どういうことだ?」

神田のお父さんも不思議そうな顔をして訊いてきた。


「あの店は、俺らの憧れみたいなところなんだ。」

……憧れ??

「橘さん…、あの店って
人の目惹いてなかった?」

「え、うん…。なんか、店からでると街の人にやたら見られてた。」

「やっぱり……」

どういうこと??


「あの店の商品、服も小物もお洒落で着こなし方が難しいんだ。半端なお洒落だと浮くから、本当にお洒落な奴しかあの店には入らない。」


そういえば、店員さんもスゴくお洒落な感じだった。
あんま覚えてないけど。

「つまり……?」

「あの店の服や小物を持っているって言うのは凄いことなの。」


なる程。
だから、みんな見てたんだ…。


「橘さん。」

「なに?」


「ありがとう。」

良かった。喜んでくれた。

「どういたしまして。」


神田の笑顔につられて
私も笑顔になっていた。