スピンオフ『真っ赤なお伽話』

件の某日から日を数えること3日。既に太陽は姿を消し、月は雲から微かに身を乗り出していた。
黒鉛をぶちまけたような暗闇を街灯が申し訳なさそうに照らしている。
「やる・・・やってやるんだ・・・」
その暗闇の中で制服を着て、肩にがくせいかばんを掛けた青年が一人息を荒げ道の真ん中に立ち尽くしている。パーマが掛かったような茶色い髪は目と襟に掛かる程の長さで、顔立ちはハーフの様である。ひどく挙動不審であり、駅を歩いていたら職務質問される事必至であった。
それもそのはず、彼の学生鞄の中にはおおよそ学業には必要と思われないものが息を潜めていた。
「・・・。」
彼は学生鞄のチャックを開け、あるものを取り出した。黒光りしL字型のフォルム。職務質問で見つかりでもしたら洒落にならない代物、リボルバー。
手に持つと分かるが、ずっしりとしたその質感は決して紛い物などではなく確かに人の命を喰らう悪魔であることが分かる。
五分ほどして青年と対峙する方向から金髪の若者が闇から姿を現した。