しかし去年の冬、それまで付き合っていた彼女と別れた。


いきなりの別れ。
別れを切り出してきたのはあいつからだった。


理由を問い詰めると
『俺が冷たい。寂しい。』

が理由らしい。


まあそれなりにショックだった。

俺なりに愛していたつもりだったし?


なのに寂しい?

冷たい?

なぜ?


でも、俺はこの時気付いた。

確かに彼女を愛していた。

しかしそれは本気でか?


確かに嫌いではなかった。

だが、今まで1つ1つの出来事にときめいた事も

胸がくるしくなったり、仕事が手につかなくなったりするほどの恋愛を…


自分の愛する人を何としても守りたいと思える本気の恋愛を…


したことがないと。


しているつもりだっただけだと、
わかった。







完璧だったはずなのに…
自分で思い上がってただけだったな…



ふっ、と軽く口元で笑い、カフェラテをのんだ。


もう…春だな…。


病院の中庭の桜が蕾を開かせ、満開の時期を今か今かと伺っている。





「さっ…回診いくか。」


椅子にかけていた白衣をさっと身にまとい、颯爽と病棟へ向かう。











これから運命の人と、運命的な出逢いを果たすとは
まだ、これっぽっちも思わないままに。