「嬉しいよ…しおり…」


初めて、彼女の名を、彼女の前で、口にした。
自然と、口から零れた。
何度今まで心の中でこの名を唱え、いつか声に出して呼びたいと願ったことか。


彼女の頬に、また一筋の涙が流れた。


俺も泣きたいくらいだよ。
今の俺、誰よりも幸せだと思う…




夢みたいだ、しおり……




俺達は体を離し、見つめ合った。



俺は、彼女の顔に、近づいた。
いや、正確には、惹きつけられた。


自然と目を閉じた。




甘い、甘い、キス。



今まで恋焦がれた、彼女。



今まで味わったことのない、そしてこの世で最大の幸せの味を味わった気がした。