「あぁ……あれ?あれは…正直に言うと、見合いの相手。母が無理やり送ってきたんだ。でも,俺は…お前を忘れられなかった。だから…始めから断るつもりだったよ。」

その瞬間、彼女の目が一瞬、光りをおびた。
「本当に…?ねぇ…あんなに綺麗な人なのに…いいの?」


「何言ってるんだよ…!!俺がこんなに好きなのに…。ずっと、会える日を待ってた。」

その言葉が、更に俺を突き動かした。


俺は、じっと、彼女の美しい瞳に目を据えた。

彼女は頬を赤らめ、下を向いた。



「俺は…お前が…好きだ。今まで…こんなに人を愛した事はない。悲しくなったり、舞い上がるほど嬉しくなったり…。
俺と…俺の…彼女に…

俺だけの、彼女になって下さい。」

今まで、ずっと俺の中だけで渦巻き、暴れてきた感情、本音。

それが今、彼女の前で、解き放たれた。
緊張しなかったといえば、嘘になるが、それでも、今まで抑えていた感情を彼女の前でさらけ出せたことは清々しくもあった。


ビー玉のような茶色く透き通った瞳、
その中に見え隠れする不安な色、ほんのり染まった頬、
恥ずかしそうに伏し目がちな様子、
影を落とす長い睫毛、
全てが俺を更に悩ませた。苦しませた。

永遠のように長く感じた、沈黙の中で、



「はい…。」

彼女は、俺の目を見据えて、そっと、答えてくれた。