カチャ
診察室のドアを開ける。
すると……
一瞬何のことか全く理解できなかったが、
廊下の蛍光灯が、部屋の中を、そこにいるはずのない面影を照らし出した。


「柊さん………まだいたの!?」

俺は驚きのあまり、甲高い声でそう言った。
その声で、彼女がそろそろと顔を上げた。

まさかそこにいるなんて思ってもなかった彼女が、そこにいたことに嬉しさがこみ上げたと同時に、彼女の様子の異変に気がついた。

どうやら彼女は、今までずっと眠ってしまっていたようだ。まだ眠そうな顔がそれを物語っている。
でも、それだけじゃない――。

彼女の顔にはうっすらとした涙の跡が浮かび上がっていた。
泣いていたんだ。
瞬時にそう思った。

明らかに、泣いたような目をしていた。
その赤くうるっとした目で、俺を見て、
「先生……?」
と呟き、ゆっくりと立ち上がった。

その瞬間、俺の中の何かが、今まで俺の感情やらを留めていたものが音を立てて弾き壊され、堰き止められていたダムが一気に放水するように、俺は自分の中の感情が一気に溢れ出した。
もう、止められなかった。