今日も回診の前に、患者のカルテに目を通す。 右手でカルテを繰りながら、 左手にはコーヒー。 柔らかくも渋みのあるコーヒーの香りが ふわっと鼻先を撫でて、部屋へと広がる。 今日もいつもと変わらない、朝。 そしてまた1日が始まるのだろう。 椅子から立ち上がり、 窓から早く顔を出したいと言っているかのような まだ少し寂しい桜の木を眺める。 ――コンコン ドアを叩く音。 「はい、どうぞ。」