「振られてしまったねぇ、尾上くん。」

日も傾きはじめた帰り道、ぽつりと部長がつぶやいた。


「そうですね。しかし、いい経験させていただきましたよ。」

山の端に近付く真っ赤な夕日を眺めながら、穏やかに言った。


「そうだね。…お見合いなら、またいつでも、言ってくれたまえ!」

ははは、と部長はあかるげに笑った。


「いえ、お見合いは当分遠慮させていただきますよ。」

そう言って、俺も
ははは、と愉しげに笑った。







好きでもなかったけれど、何だか振られるというものは、悲しかった。


いや、正確にいうと
彼女達に嫉妬していたのかもしれない。
俺はあの男の人みたく、追いかけられなかったから。
そんな勇気がなかったから。


もう叶うこともない恋に、
俺はまだ恋し続けている。