足を痛そうにさすっている彼女。







「大丈夫ですか?」



俺は、声をかけた。
声が震えてしまわないか心配だった。







彼女はゆっくりと頭を上げてこちらをみた。

あの頃と変わらない、端正な顔立ち。


一瞬息をのんだ。





「元気そうですね、良かったです。」


良い言葉も思い浮かばず、苦し紛れの言葉。


あんなにも会いたかったのに、

話したかったのに、
いざ彼女を目の前にすると、何も言葉が出てこない。


自分に苛立った。







「無理するなよ。」


そういって、彼女の頭に手を置いた。


今、俺が最大限に彼女への愛を表現できる言葉。

自分でも言った後、少し躊躇した。




このまま、「愛してる。」
なんて言って、彼女を連れ去る事が出来たらどれだけいいだろう。

でも到底俺には無理。

この予想だにしなかった展開と、
俺の性格からして、無理。
そんな大それたことなんか…







それだけ言うと、俺は手を頭から離し、お大事に、といって
また、歩き始めた。