朝から、回診。

そして、新しく入院してくる担当患者の受け入れ準備。







最近俺は、回診中もよく患者さんに声をかけられる。


「先生、今日はいい天気ですね。」

と。

ほんの些細な、どうでもいい事だったが、嬉しかった。


今まで患者さんから声をかけられるなんてなかったから。


いつも無表情で、鉄の仮面を被っていた俺に、声をかける人なんていない。


それが、彼女に鉄の仮面をひきはがされてからというもの…


もう、俺はそんな仮面は捨てた。

かぶる事はもう、やめたのだ。





その方がいい、と彼女に教わったから。

感情の大切さを彼女に教わったから。







それからの俺はまるで別人のような医者になった。







人を本気で愛することをしれたのも、

感情を出せる様になったのも、

全部、彼女のおかげだ。







彼女…大丈夫かな…。







部屋の窓辺から見える空を見上げ、彼女の面影を思い浮かべた。